「宮城道雄記念コンクールに参加して」
サブタイトル「万葉愛のうた」について
私は最近、万葉集の勉強をさせて頂く機会を得、古典の持つ奥深さや、
歌の歴史的背景、詠み手の心情に驚き感動し、是非とも箏曲として表現いたしたく作曲しました。
今回この万葉集の持つ力に助けられたと強く感じております。
この曲は、万葉集の四つの歌を歌詞として、独奏の弾き歌いの形式になっています。今後も引き続き書いて参りたく思っておりますが、それぞれ独立した小曲ですので、どの曲を、どの順で演奏して頂いても作曲者としては異存ありません。また篠笛等を即興的に入れるのも面白いと思います。
初めて「歌」のある曲を手がけましたが、箏の手はできるだけ単純にし、歌の助けになるように手付けしたつもりです。曲作りにおいて、心がけましたことは次の三点です。
- 箏の手はできるだけ易しくし、歌も自然に歌える旋律にすること。
- リサイタルでの演奏にも十分堪えうるクオリティーにすること。
- 古典の雰囲気を保ちつつ、新しい手法も用いること。
参考にいたしました歌の解釈は、作家堀治喜氏によるものです。
- 「我が園に梅の花散るひさかたの天より雪の流れくるかも(大伴旅人)」…亡き妻を偲ぶ。
- 「春過ぎて夏来るらし白妙の衣干したり天の香具山(持統天皇)」…亡き皇子への思慕。
- 「我が背子を大和へやると小夜ふけてあかとき露に我が立ち濡れし(大伯皇女)」…死を覚悟し旅立った弟への情愛。
- 「茜さす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る(額田王)」…天智天皇と大海人皇子を暗示したいわゆる三角関係の歌。
なお、コンクール予選審査の為に提出しました音源を公開いたします。また、ご要望があれば、縦譜作成も予定しております。
最後になりましたが、本選出場にあたり、助言をくださった師匠である永田文子先生をはじめ、多くの方々に感謝申し上げます。有り難うございました。
追記:YouTube(試弾を公開中です)http://www.youtube.com/watch?v=3VfCnwkGE7M |